春夏秋冬、季節を堪能するためには、都市部を離れ郊外へと足を運ぶのが一番だ。札幌中心部から国道274号線を車で走ること約一時間。視界からは少しづつ人工物が消え、徐々に北海道ならではの大地が広がり始める。田園風景が果てしなく続くその中に今日の目的地ファームレストラン「ハーベスト」がある。

りんご農家が営むレストラン

ハーベストは広大な大地に恵まれた長沼町で5代に渡り、りんご農家を営む仲野農園が1995年にオープンさせたレストランで、今で言うファームレストランの先駆け的存在の店である。オープンまでの経緯がまた北海道らしい。仲野農園４代目の社長である仲野満氏が当時無性に「ログハウスを自らの手で建ててみたい。」との想いにかられて、4年の月日を投じてコツコツと手作りで作り上げたログハウス。作るまでは良かったが完成した後のことまでは深く考えていなかった。いかにも北海道の開拓者らしい発想と行動力には感服する次第。

「そうだ！レストランにしてみよう！」

当時は農家が経営するファームレストランは珍しい存在で、周りには森と畑しかないその場所で果たしてレストラン経営が成り立つのか？これまた頭で考えていては実現しない仰天プランだ。それでもそこには都会では味わえない最高の商品が幾つかあった。「風景」と「食材」である。

窓の外に広がる四季折々の風景がもう一つのメニュー

店内は広々としてゆっくりと過ごすことができる空間で、木の温もりを存分に感じることができるスペースだ。そして何ものにも変えがたいのは窓から望む田園風景の素晴らしさである。そこには四季折々の顔があり、天候によっても様々な表情に出会うことができるであろう。

もちろん食事も絶品である、著名なシェフが調理した最高峰の料理というわけではないのだが、ここは農家直営のレストラン。季節によって自家農園で栽培された農作物をふんだんに用いたメニューは都心の有名店で味わう料理とは一味違いどことなく真心と温かみを感じる傑作揃い。

絶品の「アップルパイ」

農園で収穫された旬のフルーツを使ったデザートも食後には欠かせない。中でも自家栽培のりんごをたっぷり使いサクサクな食感がたまらない「アップルパイ」は日本全国の催事でも人気のハーベストの自信作だ。この春からはインターネットのオンラインショップもオープンし、自宅のオーブンで調理が出来るよう冷凍の状態での購入が可能になるとのこと。これはギフトなどに是非利用してみたいサービスだ。

農園直売のファームショップ

ハーベストは札幌近郊のファームレストランとして多くのファンを魅了し続ける人気の店だけに、春〜秋にかけたオンシーズンには多くの来訪者で席が空くまでに30分以上待つことも珍しくないのだが、そんな時も飽きることなく楽しめる。その理由は隣接された「農園直売ファームショップ」。ここには季節によって様々な商品が陳列されるが、外せないのはりんご農家として５代にわたり大切に育ててきたりんごをそのまま絞った「仲野農園果汁100%りんごジュース」。品種により幾つかの種類があるのだが、その味は濃厚でまさに新鮮なりんごの旨みが凝縮された逸品である。農園自家製のドレッシングも味はもちろんだが、色鮮やかで贈り物としても大人気。席が空くのを待っているのをいつしか忘れてしまうほどのファームショップの充実ぶりである。

「農業の世界では50代はまだまだ若手。」

最後にこの手作りのレストランを一から手掛けた仲野農園４代目の仲野満社長からのメッセージ。「50代半ばを過ぎ、世間一般ではベテランと言われるところ、農業の世界では50代はまだまだ若手。そこからが充実した時間とも言われています。なので、ハーベストと長沼を訪れていただくお客様に向けさらに楽しんでもらえるよう、５代目となる息子たちと共に、さらにサービスの充実を考えていきます。ハーベストがあって本当に良かったわ。と言われ続けるようにまだまだ頑張りますので、是非末長いご愛顧のほどよろしくお願いします！」

＜編集後記＞

札幌からのアクセスの良さもあり、年々人気の高まる長沼エリア。ファームレストランの先駆けとしてのハーベストの存在は近隣にも影響を与え、今や長沼・由仁近郊には郊外型のカフェやレストランが増えつつあります。札幌から長沼に向かう際には国道274を走るのが一般的ですが、筆者のオススメとしては長沼に近づいたら是非いつも走らない脇道に入ってみてください。そこには国道とは違う静寂と初めて目にする自然の風景が広がります。それこそが北海道の醍醐味。迷いながらも道を進むと大発見が待ち構えているかもしれません。人生たまには道を外してみましょう。